網膜剥離や硝子体出血などと違い、緊急白内障手術ということは、あまりありません。
手術時期を計画的に決めることができるという点では、主体的にスケジュール管理ができるので、多忙な人でも仕事や家事と手術を両立することは可能です。
ところが、それがかえって災いとなり、次々と細かな用事は湧いてくるので、それにとらわれていると、年単位で日が過ぎてしまいます。
白内障以外の大きな病気が無い場合、診察サイクルは早くて6か月 長いと年単位ということになり、無駄に日が経ち、真の高齢者になってそのまま放置となってしまいかねません。
なるべく押しつけがましくならないように、手術を勧めますが、ご家族もご本人もあまり真剣には検討されている気配はありません。
白内障で失明しない というのは、ほとんどの場合正解ですが、極まれにそうでもない場合があります。
白内障を長期温存していた場合、水晶体融解性ぶどう膜炎 という病態になることがあります。
水晶体の皮質の蛋白質が溶けだして液化して起きる急性の炎症で、激しい痛みを伴い、緊急手術が必要になることがあります。
ぶどう膜炎までいかない、虹彩炎は、時々見かけることはあります。
虹彩炎が起きている状態というのも、手術治療をする上では好ましくないですが、緊急手術になるほどではありません。
ただし術後の炎症は何でもない状態よりは、強く出ますし、虹彩と水晶体の癒着がある場合は、手術時間も長くなり、リスクも高くなります。
洗練された白内障手術ということを、私もこのブログでよく書いていますが、それは数分で終了できるこじれていない白内障の場合です。
時間がかかる難症例の手術は、感染症リスクも高くなり、組織のダメージも大きいのです。
白内障手術時には、人工水晶体を挿入することが殆どですが、その人工水晶体レンズの度数決定の検査も白内障が進行して混濁が強いと、正確性が落ちます。
また以前にも書いたことですが、白内障が進むと水晶体の容量が増し、特に狭隅角傾向の眼球の場合、急性緑内障発作を起こす危険性が増します。
白内障が自然治癒することは、残念ながらありません。
そして私を含め多くの眼科医は、そろそろ白内障が進んでいますよ ということは伝えたとしても、患者さんに代わって手術を決定することはできないですから、上記に該当するようなかなり必要が迫っている患者さん以外には、何度も繰り返し、勧めることは無いと思います。
ですから、そろそろ手術も仕方がないと思ったら、勇気をもって主治医に伝えてください。