
近視抑制を目的とした低濃度アトロピン点眼薬が、参天製薬からリジュセアミニ点眼液0.025%として4/21に発売されています。
低濃度ではない普通のアトロピン点眼は1%で、診断や治療に使われてきた長い歴史のある薬です。それなりに作用がはっきりある薬です。
アトロピン製剤は、眼科だけで使われる薬ではなく、交感神経優位に持っていく薬ですから、胃痙攣等の痙攣を抑えたり、心拍数が減っている時には心筋に作用して、心拍数を上げて心肺蘇生に使用したり、薬物中毒の際にも解毒に使われる、大変有用な薬です。
現存している保険適応のあるアトロピン点眼は1%ですが、散瞳効果が大きく、調節麻痺が効きすぎて、近視抑制効果はあるものの、副作用も含め長期に使用する近視抑制点眼液としては、採用することはできません。
調節麻痺効果には、濃度依存性があるので、安全に使用できる濃度については、シンガポールでのスタディーで調査されまた、日本国内でも臨床試験が行われました。
効果と副作用を天秤にかけて0.01%~0.05%の濃度で使用することが主流となりました。
台湾で行われた試験でも、0.050% 0.025% 0.01%で行ったところ、0.01%よりも濃い濃度が至適という結論でした。
近視抑制効果を期待して、リジュセアミニ点眼が発売されるまでは、個人輸入で海外から入手したり、1%アトロピンを希釈して使用するなどという荒業があったということも、側聞したことがあります。
ですからこのリジュセアミニ点眼液が政府の承認を受け、参天製薬から発売されたことは有用だと思います。
ただ、今明らかにされているデータからも、0.025%が本当にいいのか、0.05%ならどうか、リバウンドは本当に無いのか、何より適応とされている5歳から15歳の近視患者は、それが開始年齢だとして、一体いつまで使用を続けるのか。
またこのリジュセアミニ点眼液は、保険適応が無く、また選定療養の対象でもないため、現在日本の保険医療の枠組みにおいては、自由診療との混合診療は認められていないため、この点眼を開始すると、眼鏡作成においても、自費診療となってしまいます。
この医療側の煩雑さを避けるため、近視診療サポートツールというものが用意されていたり、患者さんのためには、ポケサポ というスマホにアプリを落として、管理するツールも用意されています。
かなりこのための経費も必要だったと思われます。
多分発売1年位すると、効果 副作用 といった情報が公開されるでしょう。
昨今の政府の情勢では、保険適応が認められる期待はあまりありませんが、年齢によって濃度が選べたり、何年以上使用しても効果がない場合、中止するといった目途が立つことを待って、当院でも採用を検討したいと思います。
参天製薬の担当者は、熱心に勧めてくださいますが、以前学会で、低濃度アトロピン点眼単独では、効果はあまり期待できず、オルソテラピーとの併用での効果を、強調されていました。
とするならば、この点眼薬を使用することが本当に、患者さんにとって意味があるのかの判断は、もう少し待ちたいと思います。
この点眼薬は、自由診療ですから、1か月分で4000円程度とお聞きしました。
効果があるなら、それでも意味があるでしょうが、1%アトロピン点眼液は1本296.6円。
自由診療ということは、視力検査や前眼部の診察も保険適応はありません。
是非効果があることを期待して見守りたいと思います。